シャープ騒動に思う、技術には寿命があり、終わる前に高値で売らなければいけないということ。
まだまだシャープの苦しい状況が続いているようですね。国が動いたり鴻海が食指を伸ばしたりと中々厳しいニュースを目にします。かつては液晶技術でトップランナーとして走っていたシャープがこのように凋落するなんて思いもよらなかったと思います。振り返れば”亀山ブランド”と銘打ったのがピークでした。もっとも、この時に今の現状を予測するなんて経営の素人の僕には思いもしませんでしたが。
この騒動で改めて思うのは、技術には寿命があるということです。正確には国単位で寿命が異なり、液晶技術はこの日本では寿命が来たと言ってしまっていいんじゃないかと思うんです。すでに韓国がトップシェアとなり、中国が取って代わろうとしているわけで、この状況下ではもはや日本の技術として生き続けることは難しんじゃないかと。
よく報道で、「技術の流出」という言葉を目にしていますが、これはもはや間違っていると思います。結論を先に言えば、鴻海にどれだけ高値で液晶技術を売るかが、シャープにとって正しい道なんじゃないかと思うんです。・・・サーセン、偉そうなこと言って。でも、これでも、僕、日本で20年以上エンジニアやっていまして、この20年の間で起きた色々な出来事を勘案すると、こういう結論になったんです。
もっとも、僕にとって衝撃だった「ある出来事」がなければ、そんな風に考えていなかったのかもしれません。
それは、IBMがパソコン技術をThinkPadブランドごと中国のLenovoに売却したことです。マスコミでは結構淡々と報道していましたが、僕はひっくり返るほどビックリしました。時は2004年で、ITバブル崩壊後とはいえ、徐々に景気も上向きかけていて、パソコンも売れ始めようとしていたんじゃないかという時期だったかと思います。かつては「IBM互換機」というパソコンが各社で売られたほどの王者が、こうもあっさりと中国に売却するなんてどういうこと??と思ったんですが、IBMの経営陣はこの先パソコン事業は将来性がない、と早々と判断したんでしょう。で、高値で売れる今のうちに売却しようと考えたんだと思います。(で、その後、サーバー事業などで好調が続きます。)
一方で、シャープはリストラするらしいですが、間違いなく技術者の一部は他国で雇われるでしょう。そうなれば早期退職の上乗せした挙句に技術がそのまま流出するわけで、「お金を払って技術を流出する」という状況になります。そうじゃなくて、堂々と鴻海などに高値で技術を売却して、「お金をもらって技術を流出する」の方がよっぽどいいんじゃないかと思います。
結局、技術は流出するじゃん、と言われそうですが、液晶技術はもはや「守るべき技術」じゃなくて「売るべき技術」になったんだと思いますよ。「あ~、亀山サイコ~」って言ってた時代に売っておけばもっと高値で売れたかも。そうすれば、次の事業に投資できたし従業員も解雇しなくてよかったのかもしれません。・・・なんて言いましたが、そんなこと当時やったら日本中でアホかって言われて大バッシングになりましたね。やっぱ無理か。でも、2003年には日本の液晶シェアは韓国に負けていたんですね。亀山工場できたのは2004年。う~ん・・・。後出しじゃんけんでいくらでも言えてしまいますが、IBMはその潮目をうまくとらえたってわけです。
まあ、今となってはジャパンディスプレイという会社が存在していて、シャープが液晶技術を他国に売ろうもんなら国とか経済界が本気で止めにかかりそうです。今となってはそんな判断はさらに難しいのかもしれません。
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